ウイッシュ・プロジェクト主催 「私をわかって… 育てにくいこどもの心の叫び」 

 「私をわかって… 育てにくいこどもの心の叫び

平成21年3月1日 於:武蔵境 スウィングホール 14:00~16:00
主催:NPO法人 ウィッシュプロジェクト(武蔵野市障害者福祉課 委託事業)

大人の発達障害の人がどのように暮らしていけば楽になるか?
-発達障害の理解と支援-

講師:東京学芸大学 特別支援科学講座 小笠原 恵

小笠原先生は現在、発達障害の内アスペルガー障害と知的障害の重い子供達30名位/年を受け持っていらっしゃっていて、
今回の講演テーマである大人には直接的には関わっていらっしゃらないので、生きて行く上で重要と思われる子供時代の支援を中心の講演でした。

最初に発達障害について基本的な説明あり、その中で印象に残った事。
原因は微細脳機能障害[検査で特定出来ない何らか機能障害がある]であって、家庭環境、教育環境、あるいはしつけ等によって出現する障害ではない。
生まれながら、あるいは発達の初期段階で生起し、風邪が治るようにはその障害が治る事はない。
ただし、周りからの適切な支援によって、そうした障害特性を抱えながら適切な社会適応をしていく子どもたち。
まずは、理解する事が大切です。

きくことの特徴1
カクテルパーティー効果:無意識に選択された音のみ聞き取る力が、自然には身につかない為、大切な事を聞き逃す・何度も聞き返す・勘違いのようか行動を取る etc.
意識的に出来る様に工夫する。注意を向ける指導。
・ 静かな所で、1対1で話す
・名前を呼んでから話す
・側に寄り、同じ目線で話す
・肩に手を置く
・補助的に書いて伝えるetc

きくことの特徴2
言外の意味や抽象的な言い方はわからない。
指示に従わない様に見える。何度も同じ事を繰り返す。
分かるとは、具体的に思考、行動につながって初めて伝わった事になる。
・静かにして→口を閉じてetc

覚えることの特徴1
短期記憶の障害→何度も聞き返す。沢山の指示を覚えていられない。約束を忘れて嘘つきと言われるetc.
通常無意味な数字を覚えていられるのは定型発達の人でも7桁位。忙しかったり疲れると力が弱まる。
☆★☆短期記憶を伸ばすのは難しい☆★☆
一つずつ伝える。
・多くても3つまで、容量も小さい
補助的な手段、メモを取る。携帯電話があるならメモリー機能を活用する。
有能な支援員は常に附箋を携帯し活用している。

覚えることの特徴2
長期記憶(繰り返し取り出して使用出来る記憶。容量は伸びる)
一度覚えた事、経験した事、学習した事が消えにくい。
間違った学習をしてしまった行動(自傷行動や他害行動、パニックなど)を繰り返してしまう。
周囲の対応の間違い。⇒正しい対応をして誤記憶を塗り替える。
嫌な記憶、怖い経験を繰り返し思い出してしまう(フラッシュバック:PTSD)
・嫌な記憶や怖い経験が必ずしも正しい記憶であるとは限らない。
周囲が○○が怖かったんだね等、同期を取って居る間に負の記憶が強化されている場合もあり、負の記憶は現在の事ではないとはっきり区別して気持ちの整理を図る。
色々な手順が決まっている。
本人にとって、良かったと思える経験をさせる。
出来た経験を増やす。

みることの特徴1
周りにあるさまざまなもの(そのときに注目しなくてよいもの)が同時に目に飛び込んできたり、ゆがんで見えたり、何重に見えたりする。
・黒板の文字をノートに写すことが出来ない。
・本を読むことが出来ない(行飛ばしをする。文字が追えない)
最近は文房具店で一行ものさしを販売している。小道具を有効活用する。

みることの特徴2
人や周りにあるものに対して、特定の一部だけしか見えない、見えていない(シングルフォーカス)
・その、周りの状況を理解することが難しくなる。少しでも変わってしまうと、同じものを同じであると理解できなくなってしまう。
どのような状況であるかしらせる。
一つずつに分けてあげれば、簡単に処理出来る事がある。

注意を集中することの特徴
様々なものに影響を受けて、次々と突き動かされるように反応してしまう。
・集中力の短さ、目標を完成させることの難しさ、おしゃべりが止まらない etc.

空間認知の特徴
ものの位置関係の把握が難しい。
行動すべき場所の把握が難しい。
・並ぶことが出来ない。
・迷子になりやすい。
・片付けが出来ない・整理整頓ができない。
・忘れ物が多い etc.
○いつどこで行動したら良いか理解出来ていない。
⇒体操着に着替えられず体育の授業を受けられなかった生徒に担任が、机を用意して○○ちゃんの着替えスペースと目印をつける工夫をした結果、
きちんと体操着に着替えて体育を受けられる様になり、自信を持てる様になった。
(同じ机で勉強して給食を食べ着替えもする事が理解出来なかった為の混乱であった。)
一つの場所で一つの行動、目印をつける工夫で簡単に課題をクリアーできる

状況理解の特徴(状況を説明する。目標設定をしらせる。)
感覚の特異性(五感が過敏であったり鈍感であったりする。)
伝える事の困難(相手に気持ちや意思を伝える事が難しい。自分から働きかけるのが難しい。

発達に障害があるということは生活のしにくさがある。
しかし、工夫次第でその生活のしにくさは改善される。
勉強は大切だけど大人になってからの方が長い。
好きな事があれば頑張れる。
小さいうちにどれだけ好きな事や得意な事を見つけて上げられるかが重要なポイントになる。
好きなこと得意な事を伸ばして上げられれば有意義な人生を送れると思います。

時間が押して、最後の方は駆け足だったので伝える事の困難に対する工夫が伺えなかったのが残念でしたが、
応用行動分析に基づいて直接指導されていらっしゃる小笠原先生のお話は理解しやすく工夫を見つける糸口として有意義な講演会でした。

以上長くなりましたが、ご参考になれば幸いです。

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